Path: galaxy.trc.rwcp.or.jp!titcca!ccut!tansei!b89763 From: b89763@tansei.cc.u-tokyo.JUNET (Junichiro Makino) Newsgroups: fj.comp.misc Subject: Special purpose machine for Astrophysical simulations. Message-ID: <4308@tansei.cc.u-tokyo.JUNET> Date: 23 Oct 89 10:58:18 GMT Reply-To: b89763@tansei.cc.u-tokyo.JUNET (Junichiro Makino) Distribution: fj Organization: Computer Center, University of Tokyo, Japan. Lines: 58 Xref: galaxy.trc.rwcp.or.jp fj.comp.misc:897 X-originally-archived-at: http://galaxy.rwcp.or.jp/text/cgi-bin/newsarticle2?ng=fj.comp.misc&nb=897&hd=a X-reformat-date: Mon, 18 Oct 2004 15:18:22 +0900 X-reformat-comment: Tabs were expanded into 4 column tabstops by the Galaxy's archiver. See http://katsu.watanabe.name/ancientfj/galaxy-format.html for more info. 東大駒場の牧野です。 我々の研究室では1年程前から天体物理シミュレーション、特に重力N 体問題の数値解を求めることだけを目的にした計算機を作っております。 このたび、120 Mflops 相当の試作機が完成しまして、天文学会でお披露 目したり新聞が取材にきたりしました。で、10/23 の毎日新聞朝刊に記 事が出たのはいいのですが、どういう取材をしていったものか数字がむ ちゃくちゃになっていたので、ここで訂正を出しておきます。 1秒に100万回計算→1秒に1.2億回計算(というか、 120 Mflops ) ホストを替えて1秒に50億回演算→ボードを高速化し、10枚程度並列 にならべることにより 5Gflops 程度にする。 そもそもどういうものを作ったかというと、基本的には重力を計算する ための専用のシストリック・アレイです。重力N体問題というのは、要 するにN個の粒子が互いの重力によって運動するというもので、天文学 の対象というのは銀河系を始めとしてたいていのものはN体問題で書け ます。 粒子がN個あると相互作用の数はN(N-1)/2個あるので、Nが少し大きく なると計算が急速に大変になります。そこで、相互作用の計算だけをす るパイプラインを作って重力の計算はそれにやらせ、あとの時間積分と か結果の処理は普通の計算機をつないでおいてそれにやらせようという のが基本的な考えです。 なぜこんなものを作っているかというと、汎用計算機に比べて(スーパー コンピュータでも)価格性能比をかなりよくできると思われるからです。 実際我々の試作機の費用は10^5円程度で、汎用機・スーパーコンピュー タの10^9円に比べると4桁違い、性能は1桁しか違わないので価格性能 比は3桁いいわけです。我々の研究にはほとんどN体問題さえできれば いいので、われわれが使う限りこの計算機は万能ということになります。 このての付加プロセッサではたいていホストとの通信が遅くてそれがボ トルネックになるといったことが多いのですが、我々の問題の場合はあ らかじめN個の粒子の座標を送っておいて、あとで各粒子への重力を受 け取るだけなので通信量はO(N)であるのに対し計算量はO(N^2)なので余 り問題にはなりません。(Nはいまのところ10^4程度です) 試作機はクロック4MHzで、パイプラインにしてクロック毎に1対の粒子 間の重力を計算します。普通の計算機でやると1つの相互作用の計算は だいたい30演算程度なので、この速度は 120 Mflops 相当になるという わけです。実際には有効数字が少ないのでそのままはくらべられません が。 再来年ぐらいにはこのパイプライン1つをカスタムLSI化し、それを 数百ないし数千個並べて1Tflops くらいにしようという話だけはできて いるのですが、そもそもLSIをつくるのにはどれくらいかかるのかと か、だいたいプリント基板というのはどうやって作るものなのだろうか とかを検討しているというのが現在の状況です。 計算機を作ることが専門の方のこのような計画についての意見は素人の 我々にはとても貴重なものです。メイル・ポストいずれでもお願い致し ます。 牧野 淳一郎 (Junichiro Makino) b89763@tansei.cc.u-tokyo.junet 東京大学教養学部宇宙地球科学教室・杉本研