Path: coconuts.jaist!wnoc-tyo-news!sinfony-news01!news.kddnet.ad.jp!rim.or.jp!tamaru-news!kuee-news!kuis-news!ohno From: ohno@lab3.kuis.kyoto-u.ac.jp (Kazuhiko Ohno) Newsgroups: fj.rec.games.video.home Subject: Re: What is the 'game'?(Re: ゲームとはなんぞや?) Date: 17 Feb 1997 02:09:08 GMT Lines: 79 Message-ID: <5e8ek4$b0h@tetoron.imel.kyoto-u.ac.jp> References: NNTP-Posting-Host: yoshino.kuis.kyoto-u.ac.jp X-Nntp-Posting-Host: momo X-Newsreader: mnews [version 1.19PL2] 1996-01/26(Fri) Originator: news@yoshino 大野@京大情報です。興味深く拝見していたのですが、何点か気になったので。 In article mizuki@tky.threewebnet.or.jp writes: >それを考えると、ときめきメモリアルはまだフラグ立てをゲームとして >考えていますよね。最後の写真の枚数とか。 これは少し違うと思いますよ。アルバムモードは移植版での追加機能ですし、 元々のゲームデザインは、膨大なデータのなかから、プレイヤーなりの展開を 楽しんで貰うというものだと思います。 ただ、ゲームを徹底的にやりこむタイプの人は、どうしても全イベントクリア とかを目指してしまうわけで、アルバムモードはそういう人向けのサービス でしょう。 #でもこういう機能を用意されると、ついむきになって全部埋めようとしてしまう >実際「痕」って分岐の数は凄く少ないんですよ。 >その代わり、どの分岐にも意味がある。 マルチストーリーものの例として「痕」を出されていますが、これが今回の スレッドで適当な例かどうかは疑問です。 コンシューマ系ユーザでプレイされていない人のために、「痕」のシステムに ついて少し補足します。 よくあるマルチストーリー・マルチエンディングものでは、決まった ストーリーラインに沿って多少の変化を交えながら進行します。この場合、 ベストエンドに至る「正解のストーリー」というのがあって、その途中で サブストーリーやサブエンディングが派生します。 この場合、正解のエンディングを目指すプレイをすると、他のエンディング (ゲームオーバー)を避けて一本道のストーリーをなぞるという、従来の 一本道のゲームと同じになってしまいます。 また、すべてのエンディングを見ることを目指すと、重複した部分をなんども プレイするのを苦痛に感じたり、すべての分岐をしらみつぶしに調べるという 不毛なプレイをするはめになったりします。 マルチヒロイン制にして、同じストーリーでも相棒が変わることで飽きないように してみたり、真のエンディング以外も救いのあるものにすることで、サブストーリー 即ゲームでの敗北と感じないようにしたりと、工夫をしているゲームもありますが、 結局は上記の欠点から逃れられていないゲームが多いと思います。 で、「痕」ですが、このゲームではヒロイン四人に対応して、ほとんど別の ストーリーが用意されており、どれに進むかによってまったく異なる展開に なります。で、個々のストーリーにより明かされる情報をつなぎあわせると、 発生する事件の真相やいろいろな設定が見えてくるようになっています。 つまり、個々のシナリオとしては未消化の伏線など未完成になっているものが、 相互に補完しあって全体で一つの話を形成するようになっています。 この構造は従来の一本道ストーリーでは表現不能で、マルチストーリーを活用した、 画期的な作品だと思います。 しかし、個々のシナリオを効果的に見せるため、「痕」では特定エンディングを みないと発生しない分岐がある、というシステムを用いています。 これは、プレイヤーに対して情報を与える順番をある程度まで制限することで、 様々な設定が明かされるときの衝撃を高める、という利点があります。 そのかわり、プレイヤーの意思による自由度の高さという、マルチストーリー ものの利点を打ち消すことにもなっています。 たとえば、シナリオの中には、主人公が死亡するエンディングを見た後に、 そこで主人公が死亡しなかった場合の後の展開を見ることが可能になる、 というものがあります。これは見せ方としては効果的ですが、「死なないように ゲームを進める」という通常のプレイスタイルを否定する、ほとんど反則技 に近いシステムです。 この欠点を考えると、「痕」のシステムは、「DESIRE」「EVE」のマルチサイトの ように、ストーリーを見せるためのシステムのように思えます。このため、 従来の一本道ゲーム、あるいは映画や小説などに対するアドバンテージになる 可能性は期待できますが、このスレッドでもともと議論されていた「ゲーム性」 という面に対しては、むしろ逆行する存在かもしれません。 ----------------------------------------------------------------------- 京都大学 工学部 情報工学科 計算機システム講座 D2 大野和彦 ohno@kuis.kyoto-u.ac.jp, HFD03511@niftyserve.or.jp(風の谷のガンダルフ) http://www.lab3.kuis.kyoto-u.ac.jp/members/ohno/home.html 使用機種:FM-TOWNSII MX 「・・馬鹿ね。神様なんているわけないじゃない」