Path: coconuts.jaist!wnoc-tyo-news!news.nc.u-tokyo.ac.jp!makino From: makino@grape.c.u-tokyo.ac.jp (Jun Makino) Newsgroups: fj.sci.math,fj.sci.physics Subject: Re: オブジェクト(対象)とメタ Date: 17 Jul 1998 03:32:59 GMT Organization: College of Arts and Sciences, Univ. of Tokyo Lines: 87 Message-ID: <6omglc$7q@news.nc.u-tokyo.ac.jp> References: <6ogs2l$jr9@news.nc.u-tokyo.ac.jp> <6ol7lm$s1u@news.nc.u-tokyo.ac.jp> NNTP-Posting-Host: provence.c.u-tokyo.ac.jp X-Newsreader: mnews [version 1.19PL2] 1996-01/26(Fri) Xref: coconuts.jaist fj.sci.math:6231 fj.sci.physics:8169 の記事において okatsuya@venusux1.kek.jpさんは書きました。 >> Reichl の教科書によると, はじめて長時間のべき乗的ふるまいが示されたの >> は >> >> B. J. Alder et al., Phys. Rev. Let. 18 988(1967) >> >> の剛体球に対する計算で, 速度自己相関関数が t^{-3/2} で減衰するという結 >> 果が得られたという事です. >> また, 解析的にも, 流体力学的議論や, 多体衝突の効果が考慮された輸送方 >> 程式から同じ結果が得られる事が示されています. なるほど、要するに 2 体近似では合わないということですね。 >> > あと、岡部さんのお考えでは数値計算で何か示すということはどういう >> > 場合に可能なのかということも御教示いただけないでしょうか。 >> >> 誤差が生じる可能性がある事以外は, 解析計算と変わらないと思いますが. で、剛体球系のような明らかにカオス的である場合に、長時間の計算結 果を上の場合は正しいと岡部さんが判断する理由はなんですか?あ、私 がその結果を信用しないといってるわけじゃありませんからね。 >> > 一体分布関数ではかけないものすべてを「衝突項」という名前で書いた >> > もののことです。衝突項が2体で書けるというのはすでに仮定であるとい >> > うことになります。 >> >> 少なくとも, その定義は L.E.Reichl やランダウ・リフシッツの教科書とは異 >> なりますね. そうですね。 >> 牧野さんの言う「ボルツマン方程式」は「物理的運動学」では単に輸送方程式 >> と呼ばれてます. 例えば Spitzer とか Chen のプラズマ物理の教科書ではそういう区別は されていません。まあ、これは、どうせそのあと衝突項を落すか、ある いはいきなり Fokker-Planck近似を導入するからなのですが。 これは言葉の定義の問題ですが、「ボルツマン方程式」は、2体以上は考 えないという近似が入ったものということにするのなら、2体近似を入れ たものからは多体相関が効くものは出ないというだけのことを仰ってい たわけですね。それは当然ですが、ミクロからマクロがでるかどうかと は無関係なことを議論されていたということですね。 >> > 別の法則とは例えばどんなものですか。また「別の法則から同じ結果を >> > 出す」というのと「還元する」というのは具体的にはどう違うのですか。 >> >> 「還元する」という表現は既に知られている別の法則に帰着させると言う意味 >> で使っているのでは無いのですか? ある法則の結果がすべて別の法則からも出せる時は、どちらか、なんら かの意味でより一般的な方に他方が「還元される」といういいかたをす るのは普通ではないかと思います。 >> 平均自由行程はともかく, 拡散係数とか緩和時間は運動学的概念ですか? >> 緩和時間と系の規模との関係は, 線形応答の理論の枠内で議論可能です. さて、線形応答理論で仮定されていることはなんでしょう? >> LTE というのは何でしょうか? あ、済みません、 local thermal equilibrium のことです。天体物理と プラズマ物理以外ではあまり一般的ではない略語でしょうか。 >> 少なくとも, 平衡系の統計力学は適用できないと思いますが. なるほど、そう思われるわけですね。それはどうしてでしょうか? >> > 誰も数値計算でエルゴード性の「証明」が出来るなんていうことを書い >> > てはいませんが、、、 >> >> <6od5o2$n7p@news.nc.u-tokyo.ac.jp> の >> >> > ません。このような古典多粒子系の数値計算では、病的な例を別にすれば実用 >> > 上エルゴード性とみなせるものが成り立っているということが示されていると >> > いっていいように思います。 >> >> というのは, どういう意味だったのでしょうか? 書いた通りの意味です。具体例をあげれば、「剛体球に対する計算で, 速度自己相関関数が t^{-3/2} で減衰するという結果が得られた」とい うのを「長時間のべき乗的ふるまいが示された」というのと同程度には 示されているということですね。 牧野@東大駒場