Path: coconuts.jaist!wnoc-tyo-news!news.iij.ad.jp!news.sun.co.jp!sunj-gate.Japan.Sun.COM!news2me.EBay.Sun.COM!venus.sun.com!cs.utexas.edu!howland.reston.ans.net!news.sprintlink.net!news.gdbnet.ad.jp!sinetnews!newssinet!news.u-tokyo.ac.jp!komaba!makino From: makino@chianti.c.u-tokyo.ac.jp (Jun Makino) Newsgroups: fj.life.religion,fj.sci.misc Subject: Re: $B%+%k%H$NDj5A(B_____The Identify OfCULT Date: 20 Jun 1995 11:23:40 GMT Organization: Dept. of Earth Science & Astronomy, College of Arts & Sciences, Univ. of Tokyo Lines: 122 Message-ID: References: <4226@aether.hil.ntt.JP> <4227@aether.hil.ntt.JP> <4238@aether.hil.ntt.JP> NNTP-Posting-Host: tache.c.u-tokyo.ac.jp In-reply-to: oshikawa@mmm.t.u-tokyo.ac.jp's message of 20 Jun 1995 07:37:44 GMT Xref: coconuts.jaist fj.life.religion:2862 fj.sci.misc:1199 >>>>> On 20 Jun 1995 07:37:44 GMT, oshikawa@mmm.t.u-tokyo.ac.jp (Masaki OSHIKAWA) said: >> 科学かどうかと言うのは、簡単に言えば >> falsifiable predictionを出して 実験で検証して、 >> 実験と合うものを残していく >> ということだと思います。 >> この点で教義とは大きく異なると思います。 > 実験と合うように理論を修正するっていうのもありますが、、、、、、 > ま、それも上に含まれると思います。 えっと、「どのように修正しても実験に合わない理論」というのがあれ ばそれでいいのですが、押川さんのいうような基準だけでは例えば天動 説と地動説のどちらを残すかは決めようがないですね。どちらも無限に たくさんの周転円を導入すれば実験と無限に合わせられますから。 > 科学哲学の業界では上の押川さんの主張は、いわゆる「素朴な反証主義」 > といわれるもので、ほとんど歴史的検証に耐えないものとされているよ > うです。 > 何が耐えないんでしょうか?? まあ、何か解説書を読まれるとよいかもしれませんが、、、要するにア ドホックな修正を許せば理論を実験によって反証するのは不可能である というのが常識的な主張のようです。 そうはいっても無限に周転円を投入するよりは Newton 力学の方がいい と(僕も含めて)多くの人は思うわけで、このいいと思うというのにな んとか理論的裏付けを与えようというのがいわゆる改良された反証主義 の立場、改良された反証主義は「反証されて」いてなにがいいと思うか は恣意的であるとするのがいわゆる認識論的アナーキズムの立場という ことになります。 > たとえば、今生き残っていてかなり信頼性の高いとされている理論として > (物理の例ばかりですが) > Newton力学で惑星の運動を計算する 別にNewton力学でなくたって計算はできるという主張はできますね。 > QEDで異常磁気能率を計算する > 超伝導のBCS理論で低温での性質を計算する 知らないのでパス。 > 相対性理論で水星の近日点移動を計算する これは結構怪しいようで、最近は一般相対論の検証といえば連星パルサー の軌道周期の変化ですね。あれは確かにずいぶんきれいにあっています。 が、いずれにしてもポストニュートニアンの範囲(Newton力学からのず れが$v^2/c^2$の一次のオーダ)であっているというだけなので、その範 囲で正しいような理論ならすべて「検証された」ということになります が、、、 > これらの理論が現在正しいとされているのは、これら反証可能な予測が > 実験で検証されているからだと思いますが、違いますか。 上のようなわけで違うというのが科学哲学の業界での「常識」のようで す。(念のためにいっておきますが、僕は別に科学哲学者ではありませ んので) 「反証可能な予測」というのは「反証される」(間違っていると示され る)ことはできても「検証される」(正しいと示される)ことはできな いというのがそもそも素朴な反証主義の主張ですね。押川さんは、実験 によって理論を「検証」できるという主張をなさっておられるのでしょ うか。 「いろいろやってみたんだけと思いつく限りの実験では間違っていると いう答えはでてないから、一応正しいということにしておこう」という のが「素朴な反証主義」の主張です。で、「そんなこといったってもし も理論と実験が合わなかったら合うまで補正項を入れるんじゃないの」 というのが「素朴な反証主義」に対する反論なわけです。 > もしも「科学哲学」というのがまあ全く無意味ではない哲学の > 分野であるということを認めるとすれば、 > 個人的にはほとんど無意味のような気がしていますが :-) > 特にそのことを主張しようということではありませんが。 実際上そう主張していらっしゃるのと同じではないかと思いますが:-) > 押川さんの意見というのは > 「科学哲学に関してなにもわかっていないのにわかったような口をきく > 科学者の意見」ということになって、別スレッドの議論での鴨さんにい > わせれば「研究者としてマトモとは思えない」となってしまうかもしれ > ませんね。(念のためにいっておきますが、僕はもちろん押川さんはマ > トモな研究者であると思います。)まあ、別に「業績と主張」している > わけじゃないからいいのかな。ちなみに鴨さんの主張は以下のようなも > のでした > ”科学哲学”なしに科学が成立しないなら、そして”科学哲学”の業界で > 言われている内容がマトモならば 僕はマトモな研究者ではないというこ > とになるでしょうね。 ”科学哲学”がなくても科学は成立します。特に、科学をするために科 学哲学を理解している必要はありません。だって別に天文学がなかった ら太陽が消えてしまうわけではないでしょう。科学哲学が科学を対象と するからといって、科学の正しい方法論を与えるということが科学哲学 の目標であるわけではありません。あ、少なくとも目標と思っている人 とそうでない人がいます。実際、ある種の科学哲学者は、「科学の正し い方法論を与えるのは不可能である」という主張をしています。 従って押川さんが科学哲学のことをなにもご存知なくても、だからマト モな研究者ではないということにはならないと僕は思います。極端な例 えをすれば、プロ野球の長嶋のいうことが不可解でも、彼が優れた選手 であることには変わりはないということです。 > 逆に、”科学哲学”をやるのに科学の正しい理解が必要ならば、 > 科学に関してなにもわかっていないのにわかったような口をきく > 科学哲学者は 研究者としてマトモとは思えない。 > という主張も成立するでしょう。 この主張はもちろん正しいです。というか、普通の哲学者ならともかく 「科学哲学」というのは「科学というものはどういうものか」に関する 哲学でしょうから、もしも「科学に関してなにもわかっていないのにわ かったような口をきく科学哲学者」というのが本当にいれば、そんなの は論外でしょう。とはいえ、たとえばクーンとかは一応物理学で学位を とっていて、そんなに簡単に「科学に関してなにもわかっていない」と いって片付けられるものではありません。 牧野@東大駒場