Path: coconuts.jaist!wnoc-tyo-news!news.nc.u-tokyo.ac.jp!makino From: makino@chianti.c.u-tokyo.ac.jp (Jun Makino) Newsgroups: fj.sci.physics Subject: Re: 自由落下の厳密解 Date: 15 Oct 1996 04:50:25 GMT Organization: College of Arts and Sciences, Univ. of Tokyo Lines: 57 Message-ID: References: <53fv3j$98q@fs.naruto-u.ac.jp> <53skco$q9s@sakura.kudpc.kyoto-u.ac.jp> NNTP-Posting-Host: kaiji.c.u-tokyo.ac.jp In-reply-to: c54262@sakura.kudpc.kyoto-u.ac.jp's message of 14 Oct 1996 05:51:20 GMT >>>>> On 14 Oct 1996 05:51:20 GMT, c54262@sakura.kudpc.kyoto-u.ac.jp (sakaguchi fuminori) said: > "怪物騒ぎ"の坂口です。先日の問題とも絡めてちょっと口出しを。 > 牧野様。fj.sci.physicsの読者の皆様。お久しぶりです。 どうもお久しぶりです。牧野です。 >> 人工衛星の軌道計算とかには(月もそうですが)地球が丸くない効果を >> 入れる必要があります。僕はあまり詳しくないのですが、通常は地球の >> 重力ポテンシャルを球面調和関数展開をして出てきた方程式を数値的に >> 解いているように思います。 >> >> これが地球くらいだとまあ展開して扱えるのですが、小惑星の回り(数 >> 年前に、ハッブル宇宙望遠鏡で小惑星の衛星が発見されています)だと >> 小惑星の形があまりにイビツなのでなかなか近似が良くならないとかい >> う話を研究会で聞いた記憶があります。 > これなんか典型的な例だと思いますが、ほとんどの物理の問題は厳密には > 説明できないのではないでしょうか。一見単純そうに見える力学の問題ですら > このありさまですから。球対称とかいうような近似的な特殊な仮定を設けて、 > 問題を単純な言語で記述できる単純な数学モデルに還元していくしかないの > では・・・・ また、そこからのズレによる補正項は、適当な連続群をなす変換 > 操作の固有関数系で展開してそれに適当な意味付けをするとかするしか・・・・ うーん、小惑星の回りの軌道という話に限っていえば、「厳密には説明 できない」というのとは違うのではないでしょうか。ニュートン力学の 枠内での記述の実用的な近似解を求めるのが球対称に近い場合に比べて 簡単でないという話なわけですから。小惑星の質量分布が与えられれば その衛星の運動は「厳密」にきまると思っていけなくはないと思います (まあこまかいことをいえば太陽の輻射圧とか潮汐力とかいろいろある わけですが、、、)。 実用的な解を求めるには、例えば展開しないで小惑星の質量分布を適当 に離散化して表現するという方法もあります。これは「球対称とかいう ような近似的な特殊な仮定を設けて、問題を単純な言語で記述できる単 純な数学モデルに還元していく」というのとは違った考え方のようにも 思えます。 > #量子力学の問題でいう相互作用摂動項の寄与なんか、この問題でいう球面関数 >  展開の高次項の寄与のようなものだし・・・  > #フーリエ変換だって結局は、並進変換の固有関数系による展開だし、 >  その各成分をしばしば実体(??)のある波だと見なして説明するるわけだし・・・ > こういう意味で、物理法則は一種の言語と考えた方がいいとかも思いますが。 > 説明の構築は、数学モデルへの近似還元手順の構築だと思います。並進不変性や > 回転対称性をなぜ優先的に選ぶか、とかには、習慣以外に何か根拠があるので > しょうか。 このあたりのことは、「物理法則」の性質というよりはむしろ、非線形 の物理法則のふるまいを線形近似+摂動展開というふうに扱う数学的手 法の性質に過ぎないのではないかとも思うのですが、いかがでしょうか。 で、まあ、その、線形で扱える範囲だと莫大な計算をしなくてもいろん なことがわかるので、応用的には重要だということはあるかと思います。 牧野@東大駒場