Path: coconuts.jaist!wnoc-tyo-news!news.nc.u-tokyo.ac.jp!makino From: makino@chianti.c.u-tokyo.ac.jp (Jun Makino) Newsgroups: fj.sci.physics Subject: Re: 自由落下の厳密解 Date: 16 Oct 1996 04:54:29 GMT Organization: College of Arts and Sciences, Univ. of Tokyo Lines: 69 Message-ID: References: <53fv3j$98q@fs.naruto-u.ac.jp> <53skco$q9s@sakura.kudpc.kyoto-u.ac.jp> <53v9qo$9gp@sakura.kudpc.kyoto-u.ac.jp> NNTP-Posting-Host: kaiji.c.u-tokyo.ac.jp In-reply-to: c54262@sakura.kudpc.kyoto-u.ac.jp's message of 15 Oct 1996 06:09:28 GMT >>>>> On 15 Oct 1996 06:09:28 GMT, c54262@sakura.kudpc.kyoto-u.ac.jp (sakaguchi fuminori) said: > 坂口です。 > 疑問は、その際それが軌道の説明になっているかという点です。もちろん、 > 仮想的に質量多重極子間の相互作用みたいな比喩で表現したりはできましょう。 > けれども、それが「いびつな物体の周りのいびつな物体の運動」という問題を > 説明したことになっているのでしょうか。という疑問です。 > 数値的に合わせるだけなら、計算機の性能にモノをいわせて、どんなグロテスクな > 方法でも幾つか道はあると思います。 これはその「説明」というのはいったい何かということによるのではな いかと思います。「実用的な予測手法」=「説明」とみなす立場なら十 分説明でしょう。 >> 実用的な解を求めるには、例えば展開しないで小惑星の質量分布を適当 >> に離散化して表現するという方法もあります。これは「球対称とかいう >> ような近似的な特殊な仮定を設けて、問題を単純な言語で記述できる単 >> 純な数学モデルに還元していく」というのとは違った考え方のようにも >> 思えます。 > もちろん、この方法でも可能でしょう。けれども、上の方法と、軌道の説明として > 接点があるでしょうか。同様に異なる観点に基づいた計算法は複数存在しますが、 > それぞれに対応した「説明」があると思います。それらの中で、ある一つの > 説明に基づいて表現する理由は? えっと、上の小惑星の問題に限定すれば、例えば普通の離散化と球関数 展開は近似関数を構成するためにもってくる関数空間の基底が違うだけ ですよね。で、基底になにを持ってくるかは計算のしやすさの問題では ないかと思います。で、数値計算の手法としてみるかぎり、それぞれの 基底がある「説明」に基づいているというわけではないと思うのですが。 基底は別に任意に持ってきていいわけで、その数だけ「説明」があると いうのはなんか奇妙な気がします。 >> このあたりのことは、「物理法則」の性質というよりはむしろ、非線形 >> の物理法則のふるまいを線形近似+摂動展開というふうに扱う数学的手 >> 法の性質に過ぎないのではないかとも思うのですが、いかがでしょうか。 >> で、まあ、その、線形で扱える範囲だと莫大な計算をしなくてもいろん >> なことがわかるので、応用的には重要だということはあるかと思います。 > 確かにそうなのですが、分析の対象となっている問題と使用する数学的手法の > 間を繋ぐものは何でしょうか。対象に関する説明を、数学的手法に関する説明に > すりかえているのではないでしょうか。もちろん、両者の間に必然的な対応関係が > あるのであれば、その根拠は良く理解できますが・・・・ うーん、「分析の対象となっている問題と使用する数学的手法の間をつ なぐもの」は、「この方法でうまく解けた」という経験の積み重ねでし かないような気がします。ただ、坂口さんの議論でちょっとよくわから ないのは、例えば上の小惑星の衛星の問題の場合に、 a)衛星に働く力はニュートン重力であり、これは小惑星の質量分布から ポアソン方程式を解けば求まる というふうに問題を定式化するということと b)一般の質量分布が与えられたときにその回りの重力場を求めるために、 球面調和関数展開なり差分法なりをつかう ということのどちらを指して「使用する数学的手法」といっておられる のかということです。とりあえず(b)の方が数学的手法で(a)のほうで定 式化された後の問題が「分析の対象になっている問題」そのものである とすると、僕はその2つの間に「必然的な対応」なんてものはないと思う のですが。計算機がないと線形近似+摂動展開で扱えるものしか対象に ならなかったということはあるかもしれません。 牧野@東大駒場