Path: coconuts.jaist!wnoc-tyo-news!sinfony-news!news01.so-net.or.jp!infosphere!asakanet!axion!asakagw!fiaskry!sakunami!chiba-ns!news.chiba-u.ac.jp!eclnews!sinetnews!news.nacsis.ac.jp!alps!cryst!escargot!t-server!mech.t.u-tokyo.ac.jp!is.s.u-tokyo!zion.phys.s.u-tokyo.ac.jp!news.nc.u-tokyo.ac.jp!makino From: makino@chianti.c.u-tokyo.ac.jp (Jun Makino) Newsgroups: fj.sci.physics,fj.sci.philosophy Subject: Re: Reference on 'incommensurability' Date: 29 Sep 1996 13:46:28 GMT Organization: College of Arts and Sciences, Univ. of Tokyo Lines: 46 Distribution: world Message-ID: References: NNTP-Posting-Host: kaiji.c.u-tokyo.ac.jp In-reply-to: makino@chianti.c.u-tokyo.ac.jp's message of 28 Sep 1996 06:35:34 GMT Xref: coconuts.jaist fj.sci.physics:3847 fj.sci.philosophy:978 牧野@東大駒場です。ちょっと補足 >>>>> On 28 Sep 1996 06:35:34 GMT, makino@chianti.c.u-tokyo.ac.jp (Jun Makino) said: >>>>> On 28 Sep 1996 03:08:53 GMT, kuroki@math.tohoku.ac.jp (Kuroki > Gen) said: >> 野家啓一の論文集[N]に所収の「「共約不可能性」再考」p.121には、共約不可 >> 能性を「同じ図形がある人にはウサギに見え、別の人にはアヒルに見えるといっ >> た知覚レベルの反転現象と同列に論じられてはならない」と書いてあります。 >> しかし、ファイヤアーベント[F]の邦訳の第17章を見ると、「その明示的な定 >> 義を与えることはほとんど可能ではない」とした上で、「共約不可能性」の例 >> として知覚レベルの反転現象とみなされるものも挙げてあります。この辺の食 >> い違いをどう理解したら良いのでしょうか? > 「人によっていうことが違う」というふうに理解なさればよろしいので > はないでしょうか。野家は「共約不可能性」を「再考」したんでしょう > から、ファイヤアーベントと全く同じことをいっていなくても不思議は > ないと思うのですが。 >> しかし、ニュートン力学とアリストテレス運動学の共約不可能性に関する上よ >> うな説明に納得した人でも、特殊相対論的力学とニュートン力学の間の共約不 >> 可能性についてそれと同じレベルで論じることには、不平不満を感じる人は多 >> いはずです。 (私もそうです。) 不可能性の程度や性質を無視して「それらは >> 共約不可能性であるか否か」を論じることは無意味であると思います。 > えっと、例えばどんなひとが不可能性の程度や性質を無視して「それら > は共約不可能性であるか否か」を論じているのですか?野家の議論につ > いては黒木さんは暇がなくて詳しく見ていないということのようでした > が、他にどのような例があるのでしょうか。 Feyerabend の場合には、共約不可能性というのはあくまでもある種の科 学哲学に対して「そういう立場は無理だ」というための道具立てであっ て、その文脈のなかでないと意味を持たないような概念です。(「挑戦」 はある意味で「ラカトシュに向けて」書かれているということには注意 する必要があると思います)というわけで、普通の科学者が「ニュート ン力学は相対性理論に含まれる」と感じるのがおかしいとかおかしくな いとかというのとは全く無関係な話のようです。 彼の Philosophical Papers: Volume 1 の前半のいくつかの論文に一般相 対論とニュートン力学の「共約不可能性」がかなり詳しく論じられてい るそうですので、そちらも御覧になってはいかがでしょうか。 牧野@東大駒場