Path: coconuts.jaist!cs.titech.ac.jp!o.cc.titech!titech.ac.jp!wnoc-tyo-news!etlnews.etl.go.jp!rpnntp.aist.go.jp!news.imnet.ad.jp!nntp.kreonet.re.kr!newsfeed.dacom.co.kr!howland.erols.net!newsxfer.itd.umich.edu!news.join.ad.jp!Q.T.Honey!quest-news!news.t.u-tokyo.ac.jp!news.nc.u-tokyo.ac.jp!makino From: makino@grape.c.u-tokyo.ac.jp (Jun Makino) Newsgroups: fj.sci.physics Subject: Re: 大気温と気候変動 Date: 01 Apr 1998 11:41:57 GMT Organization: College of Arts and Sciences, Univ. of Tokyo Lines: 44 Message-ID: References: <6f3u1i$l8o$1@news.tut.ac.jp> <55emziyh3b.fsf@hadron.phy.bnl.gov> NNTP-Posting-Host: kaiji.c.u-tokyo.ac.jp In-reply-to: Shigemi Ohta's message of 31 Mar 1998 11:12:40 -0500 Xref: coconuts.jaist fj.sci.physics:7088 >>>>> On 31 Mar 1998 11:12:40 -0500, Shigemi Ohta said: >> 二酸化炭素が増加すると対流圏では地表の熱が出ていきにくくなるので、 >> それを補うために全体に温度が上昇します。ところが、成層圏の温度は >> もともと対流圏や地表の温度とはほとんど無関係です。こちらは二酸化 >> 炭素が増加するとむしろ宇宙に放射の形で熱を出しやすくなるので、温 >> 度が下がることになるわけです。 > If the temperature decreases there, the total radiation would go down > with it as T^4, wouldn't it? No matter how the balance is shifted. あ、太田さん、どうもごぶたさしております。上の説明は emissibity とか optical depth という言葉を使わずに書こうとしたので、かえって わかりにくくなってますね、、、以下、普通に書いてみます。 いま、面倒なので成層圏と対流圏の間の相互作用は無視し、さらに 成層圏の温度は一様であるとします。 成層圏の赤外域での optical depth は1より小さいので、放射伝達の式 を解いて見るとすぐにわかるように、大気表面での放射密度は黒体放射 よりも小さくなっています。つまり、実効的な emissivity が小さいわ けです。で、二酸化炭素が増加すると、 optical depth が大きくなる、 つまりは emissivity が大きくなるので、同じ温度だと放射量が増えま す。そこで、放射量を一定に保つために温度が下がるわけです。 emissivity が同じであれば、もちろん太田さんのおっしゃるとおり温度 が下がれば放射量は減るわけですが、emissivity が変わる話ですので。 さらに、emissivity に波長依存性がなければ、 emissivity が変わって もやはり温度は変わりません。(この場合放射フラックスは変わります が)二酸化炭素は赤外に広い吸収帯を持ちますが可視域での吸収は弱い ので、赤外だけでemissivity がかわるということが重要なわけです。放 射を吸収するほうは、太陽光の特に紫外部分をオゾンが吸収するのが主 で、これによるエネルギーフラックスは温度にも二酸化炭素量にもあま り依存しません。このために、 optical depth が増えると温度が下がる という一見直観に合わないことが起きることになります。 もうちょっというと、可視域にピークがある放射が入ってきて、赤外で でていくという非平衡定常状態にあるからこういうことが起きるわけで、 熱平衡であればemissivity が波長依存性をもって変化しても温度は変わ りませんね。 牧野@東大駒場