Path: coconuts.jaist!wnoc-tyo-news!news.u-tokyo.ac.jp!newssinet!sinetnews!hagi!hit!mito!snozawa From: snozawa@helios1.sci.ibaraki.ac.jp (Satoshi Nozawa) Newsgroups: fj.sci.astro,fj.soc.misc Subject: summer time Followup-To: fj.soc.misc Date: 21 Apr 1995 09:02:37 GMT Organization: Department of Earth Sciences in Ibaraki University Lines: 108 Message-ID: NNTP-Posting-Host: helios1.sci.ibaraki.ac.jp Xref: coconuts.jaist fj.sci.astro:756 fj.soc.misc:3491 野澤@茨大理地球です。 鹿児島大学の森本雅樹氏から、参議院で導入が検討されているサマータイムに ついての意見を転載します。Followup-To は fj.soc.misc とします。 --------------------------------------------------------------  参議院でサマータイムの導入が議員立法で審議されています。日本の西の端に位置 する西南九州、沖縄では、かなり都合の悪い事が起きます。このことを皆さんにお知 らせし、参議院の審議に反映させることはできないかと考え、本文書をお送りいたし ます。            1995年4月15日  鹿児島大学教養部 森本雅樹 サマータイム導入にともない西日本に起きる種々様々な弊害について まず、以下の1)〜3)で予備知識をつけてください。 1)サマータイムとは  夏期には日の出が早くなります。朝起きるともう陽が高く昇っています。これだけ の時間を「無駄」にしないために、時計を1時間ずらせよう、というのがサマータイ ムの発想です。日本では第二次大戦直後の占領下に短期間実施されましたが、すぐに 廃止されました。 2)どんな影響があるか  全ての現象が1時間後にずれます。その結果、6時が7時になり、朝の時間は有効 に使われます。さらに夕暮れが1時間遅れます。東京では日の入が8時過ぎになりま す。この程度であれば、外仕事がゆっくりできるなどのメリットも考えられるでしょ う。 3)標準時と時差  日本の「中央標準時」は東経135度、兵庫県明石を通る子午線(南北線)を基準 にしています。これを基準にすると、九州地区は約20分、南西島弧では最大1時間 あまりの時差(マイナス)があります。サマータイムを検討している参議院がある東 京は逆に約20分の、北海道東端近くは約50分のプラスの時差になります。  通常は時差1時間程度を目安にそれぞれの地域でそれぞれの標準時を採用していま す。しかし、我が国では一つの標準時である「中央標準時」で統一し、東西端で多少 の無理をする代わりに、どこへ行っても同じ時刻、というメリットを取っています。 4)日の出、日の入の時刻と薄明  日の出入りの時刻は季節により、場所により違います。 a)時差の分だけ早く、または遅くなります。 b)夏、日本では、北に行くほど日の出は早く、日の入は遅くなります。(極端な場 合が白夜である、考えてだければ理解できます) c)日の出前、日の入後もしばらく明るい現象を「薄明」と呼びます。この長さも場 所、季節によって違いますが、全く暗くなるまでの時間は、本州、九州では1時間3 0分程度、南西島弧の南端では1時間程度です。この半分程度の時間がかなり明るい と考えてよいでしょう。 さて、この予備知識で考えると、 九州沖縄でサマータイムを採用すると 1)夜の9時はまだ明るい  夏至の近くでは、東日本では日の入は午後7時少し前、九州では7時30分くらい になります。これに薄明時間を加えると、東日本では7時半くらい、九州では8時こ ろまで明るいということになります。  サマータイムを実施すると、東日本では8時半、九州では9時まで明るいという結 果です。  たった30分ですが、9時まで明るいのは生活のリズムをかなり壊すことになるで しょう。この点、サマータイムは九州ではかえって不便、ということになります。 2)夕方5時まで炎暑  昼間の最高気温は通常午後2時頃起きます。日中の炎暑はその前後約1時間半と考 えると、これが午後3時半程度まで続くことになります。サマータイムによってこれ が1時間後にずれ、午後4時半まで、九州では時差で約20分遅れますので、夕方5 時頃まで炎熱、という結果です。 もちろん、日の出日の入のようなはっきり定義できる瞬間ではないので、この数字は やや漠然としますが、例えば昨年の統計では、7、8月の昼間最高気温は、それぞれ 約10日間、15時(サマータイムでは16時)以降に起きています。その結果、こ れらの日は、夕方5時以後まで炎熱が続くと考えられます。 3)朝7時ま暗い  サマータイムの終わり頃、9月末には那覇で6時20分頃、与那国島では6時35 分頃が日の出になります。サマータイムでこれが1時間遅れると、それぞれ7時20 分、7時半です。これは本州での真冬の日の出時刻より20〜30分遅い時刻です。  さらに南では薄明時間が短いので、明るくなるのが那覇では7時少し前、与那国で は7時過ぎになってしまいます。  真冬の朝、いつまでも暗いので生活のリズムが狂うのは誰でも経験するところです が、それが更に数十分遅れで、こともあろうにサマータイムのために起こるのです。  更に滑稽とも言えるのは、同じ日に、日の入りは、サマータイムがなければ午後6 時20分頃、それがサマータイムのおかげで7時20分になり、7時50分くらいま で明るいという結果になります。これは東日本の真夏よりも更に遅い夕暮れです。朝 は真冬、夕方はあ真夏を更に強調した感覚、これが南西日本のサマータイムです。 結論:九州沖縄でサマータイムは害のみである  日本は東西に広がった国土を持ち、その間、約2時間の時差があります。普通なら 2つに分けるところを、全国統一した「中央標準時」を、東西端で無理をしのぐ形で 保持してきています。  これ以上のズレは、既にある無理を許容範囲以上に拡大する結果になることは明ら かです。  サマータイムは、東日本(プラス時差の地域)には都合が良くても、マイナス時差 の西日本では都合の悪い方向に働くことが多くなり、九州沖縄では、既に払っている 許容範囲を少し越える無理を更に拡大し、上記のような不自然な生活を強いられる結 果になります。 全国の皆さんにお願い  東西に広がった日本が全国統一の「中央標準時」を保持しているのは、東西両端の 住民が不自然な時間感覚を我慢している結果であり、サマータイムという、1時間も のズレが起きれば、この無理は限界を越えることを認識していただきたいと思います。  端っこといっても半端な人数ではありません。西南九州(長崎、佐賀、福岡、熊本、 鹿児島)と沖縄でえ1200万以上の人が住んでいます。 サマータイムの導入は思いとどまっていただきたいと思います。 参考資料:理科年表  天文年鑑:誠文堂新光社  鹿児島地方気象台 -- 関東地区ではフジテレビが放送していた Star Trek The Next Generation が 4月15日をもって打ち切られました。残りの再開を望む方は「162-88 フジ テレビ 映画部」まで嘆願書を出して下さい。ST-TNG の火を消さないで(の)